前回に続き、一般公開の展示ブースを中心に 2016年のCESのレポートをお伝えします。
総括としては、日本では知られていないような中国・台湾・韓国のメーカーが大手ブランドと並んで、より大規模な展示ブースを構えてアピールしていたのが衝撃的でした。会場内で耳にする外国語も中国語と韓国語が大多数。
みなさんはZTEやOPPO、TCLといったスマホ・家電メーカーを聞いたことがありますか?こういったブランドがどれだけグローバル・マーケットで存在感を持ってきているかご存知でしょうか。GoProのような、かつてのスタートアップがCESに出展しどんどん注目を集めて成長していった、そんな雰囲気を感じるためにも、日本からCESにもっと参加してほしいと思います。

  CES 2016 展示会場 - LVCC ラスベガス・コンベンションセンター

CES 2016 展示会場 - LVCC ラスベガス・コンベンションセンター

最新のテクノロジーが発表されるCESは、まさに来場者が未来の世界がどんなことになっているかを垣間見れる見本市です。

デジタル家電や電子機器のみならず、世界中の私たちの生活をサポートするうえで最も重要なインフラとなったインターネット関連やスマートフォンに加えて、自動車分野、無人システム、スポーツや健康管理に関連に関連した様々な分野が複合したソリューションの広がりがありました。

Intelのブース。スポーツ、ヘルスケア、クリエイティビティを柱とした構成になっていました

 Intel ブースの中央ではトークセッションが行われていた。

Intel ブースの中央ではトークセッションが行われていた。

 ゲーマーのサポートも進化! Intel REALSENSEテクノロジーを使用した、プレーヤーの表情をゲーム画面に取り込んで合成するデモ。

ゲーマーのサポートも進化! Intel REALSENSEテクノロジーを使用した、プレーヤーの表情をゲーム画面に取り込んで合成するデモ。

 自律飛行するドローンの展示。障害物を検知して、自律的に衝突を回避する。

自律飛行するドローンの展示。障害物を検知して、自律的に衝突を回避する。

 Intel ブースのエントランスでは、先の基調講演でも披露されたバーチャルリアリティを使った3Dペインティングの展示を発見。

Intel ブースのエントランスでは、先の基調講演でも披露されたバーチャルリアリティを使った3Dペインティングの展示を発見。

VR - ヴァーチャルリアリティはCESでも大きなトピックのひとつ。様々なメーカーがヘッドマウントディスプレイタイプのVRを展示していました。

頭の動きに合わせて仮想現実のビジュアルがリアルタイムに追従するヘッドアップデバイス ”Rift” の2016年3月の一般向け発売をおこなった米オキュラス社のブース。facebookが2400億円!で同社を買収したことも話題になりましたね。オキュラス・リフトは創業者のパーマー・ラッキーが10代のころ自宅のガレージで開発したというストーリーがありますね。体験ブースには長い行列ができていました。

SAMSUNGはオキュラス・リフトと提携した、Gear VRを展示。

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GoProブースでも。GoProカメラ6台を組み合わせて360°同時に撮影された動画を、オキュラス・リフトで全方位体験できる。左端に見えるのが全方位GoProカメラの「GoPro OMNI」
この後、2016年8月17日にリリースされた。

 発表が心待ちにされていた PlayStation VRの体験ブース。この後2016年10月13日に発売された。

発表が心待ちにされていた PlayStation VRの体験ブース。この後2016年10月13日に発売された。

ゲーム関連では”アクティブVR”のパイオニアを自負する、米Virturix社のゲームインターフェース”Omni”のデモが注目を集めていた。

オキュラス・リフトを装着したプレーヤーはウォーキング・マシーンの上を歩いたりしながら、全方向ゲームの世界に没入するVR体験ができる。

頭につけるタイプのディスプレイは、実は結構昔から存在していました。まだ私が映画学科の大学生だったころ(20年前..)ソニーが当時10万円くらいのヘッドマウントのディスプレイを発売していて、デジタルビデオカメラに繋いでビューファインダーの代わりになるかテストしたことがあります。当時は目の前に画面が表示されるだけのものでしたが、現代のヘッドマウントデバイスはユーザーの動きと連動して、全方向のVRを体験できるようにと大きく進化しています。

Intelがデモを行っていたようなバーチャル リアリティ・3D ペインティングがどのような仕組みなのか興味を持った私は、Nidec日本電産のブースで詳しい解説を聞くことができました。なんと、このシステムのコア・パーツは日本製だったんですね。

HTC コーポレーションで開発されたバーチャル リアリティ ”VIVE” システムについて、Nidec 日本電産株式会社 衣松孝祐氏にお伺いしました。

「このシステムは、2つのライトハウス・ベースステーションと呼ばれるボックスから照射されたレーザーを検出することにより、ヘッドマウントディスプレイやコントローラーそれぞれの位置が検出され、VRと連動する仕組みになっています。」

「弊社Nidecでは、このライトハウス・ベースステーション向けに特殊なモーターを開発しました。ベースステーションからは縦・横方向のレーダーのように空間をスキャンする赤外線レーザーが発光されています。正確なレーザースキャンが正確な位置検出を保証するため、Nidecでは非常に回転精度の高いモーターを開発しました。このライトハウス・ベースステーションにより、ユーザーはルームスケールと呼ばれる空間でバーチャルリアリティーを体験することができます。ユーザーは360°の映像の中で自由に歩き回ったり、バーチャルリアリティー空間とインタラクションすることができるようになっています。」

Nidecブースではこの他にも、超小型の3軸スタビライザーを搭載したUSBカメラや、ユーザーに皮膚感覚フィードバックを伝えるハプティクス技術、モーターや制動モジュールなどロボティクス開発に関わる展示を行っていました。

3D PRINTING

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3Dの仮想世界を橋渡して、物質世界に持ってくるテクノロジー、3Dプリンター。
コンシューマー・テクノロジーの分野で毎年成長し続けているもう一つのセクターとして、CES 2016では3Dプリント技術のデモやモデルがたくさん展示されていました。

 

3Dプリント・マーケットプレイスの展示スペースの中でも、いちばん来場者の注目を集めていたのがこの等身大の3Dプリント・ストームトルーパー。呆れるほどディテールに溢れていて、強いフォースを感じました!

「ストームトルーパーのオリジナルのプロトタイプ・コンポーネントは、弊社のProX800とProX950を使用して、SLA、ステレオ・リソグラフィーで造形されたんだ。」と語る、米3Dシステムズ社のウイリアム・スタージョン氏。テック・ギークの私にとって、CESはたまらない見本市です。

元々3Dプリンタは、主に自動車やエンジニアリング分野の製造業においてプロトタイプを製作するために使用されてきました。今ではデジタル技術の進歩により、一般向けにも数多くのアプリケーションが提供されています。

こちらはテキスタイル分野への応用例。サーモ・ポリウレタン素材で3Dプリントされたパーツを組み合わせたマテリアルはソフトな弾力があり、光を透過するなどファッションデザインに新しい可能性を提案していました。

一般消費者向けに手頃な価格で、よりコンパクトなユニットで3Dプリンターを提供しているのが、台湾のXYZ Printing 社。
同社の3Dプリンターは$269ドルからと、私も趣味で試してみたくなるような低価格です。

台湾XYZ Printingのフェア・ツァイ氏
「XYZ Printingでは、消費者ができるだけ3Dプリント技術に親しみやすいように、出来る限り手頃な価格で3Dプリンターを提供しています。今では誰もが3Dプリンターを試せる価格まで、コストダウンに成功しました。」
同社では他にも簡単に使える3Dスキャナーなど、廉価に試せるアクセサリーも充実していました。

TV & VIDEO

3Dといえば数年前には「3Dテレビ」がちょっとしたブームになっていましたが、今年は3DテレビはオキュラスVRに完全に取って代わったようですね。3Dのかわりに、テレビの世界では4KUHD(ウルトラ・ハイデフィニション)と、特にHDR-ハイダイナミックレンジに開発の重点が置かれていました。

SAMSUNGのブース。同社が開発をすすめるクオンタム・ドット・ディスプレイテクノロジーを採用した、1,000nitの輝度レベルのハイダイナミック・レンジと、世界初のベゼルレスデザインを採用した 4K Ultra HDテレビ、KS9500 が中心となった。

 取り囲むような設計のSONYブース。

取り囲むような設計のSONYブース。

SONYのブースでは、ハイダイナミック・レンジをフルにサポートする超薄型バックライト・ドライブを採用したX930Dシリーズが発表された。

SONYは近年、4Kコンテンツ制作のためのビデオカメラの新機種を立て続けに発表しています。私も映像製作者の一人として、その動向には目が離せないのですが、とくに映画製作者向けにカスタマイズされたカムコーダーの展示コーナーが興味深かったです。

ソリッドステート・カムコーダー PXW-FS5 のシネマ製作カスタム例。小型軽量のパッケージにS-Log 4K収録やスーパースローモーション撮影など、様々な可能性が詰め込まれています。私も発売後すぐに同機種を購入して、コンテンツ制作に活用しています。

最高感度ISO409600という超高感度で映像業界が騒然となった α7Sの”ハリウッド・ムービー・プロダクション” カスタム。このようなミラーレス一眼カメラと、ビデオカメラの役割がクロスオーバーしてきているのが近年の映像制作のトレンドです。

 Panasonicブースでは、Panasonic Studium と称したジャングルジムで4Kカメラのテスト撮影ブースを設けていた。

Panasonicブースでは、Panasonic Studium と称したジャングルジムで4Kカメラのテスト撮影ブースを設けていた。

Panasonic Studium - アスリートがウエアラブルカメラを装着してデモを行っていた。

 4K CREATORS STUDIOとして、LUMIXを活用した動画制作のレクチャーを行うブースも設けられていた。

4K CREATORS STUDIOとして、LUMIXを活用した動画制作のレクチャーを行うブースも設けられていた。

4K の次世代として、すでに8Kの提案も始まっています。8Kの解像度を活かしたタッチパネルディスプレイの体験コーナー。

8Kを非圧縮で転送し、広色域で8K映像を表示するシステムの解説をするPanasonic技術部の瓜生 一英氏。

「こちらがレーザーバックライトを用いた、広色域タイプのディスプレイになっておりまして、BT.2020規格のおよそ98%を再現しているものになります。」

BT.2020 といえば、スーパーハイビジョンの国際規格として提唱されている、現在のハイビジョンデジタルシネマの色空間を遥かに超える広い表色系で、自然界に近い階調表現ができるという将来の放送規格ですが、それをほぼ再現しているというのは凄いことですね。

Canonブースでも8Kライド・エクスペリエンスと題して8K体験ブースが公開されていました。気になる8K Cinema EOSカメラはこの時点ではまだプロトタイプとのことで、実機の展示はありませんでした。

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今回のCESで個人的に一番うれしかった展示は、KODAKがスーパー8を復活させて、8mmフィルムカメラの新機種の展示を行っていたこと。

8ミリフィルムってご存知ですか?スーパー8はカートリッジに入った映画用フィルムで、私が映画学科で初めて映画製作を学んだのも、この8ミリフィルムでした。映像制作が完全にデジタルのプロダクションに変わった現在、国内ではフジフィルムがすでに8ミリフィルムの取り扱いをストップして何年も経つのですが、フィルムメーカーのKODAKがこうやって8ミリフィルムカメラの新機種を出してきたのは嬉しい限り。まさにアナログ・ルネッサンスですね。スーパー8カメラの最新機種はLCDビューファインダーがついていたり、USBやHDMIポート、SDカードスロットなど、現代の標準I/Oもちゃんと付いていました。KODAKは映画製作を学ぶ学生向けに8ミリのサポートを表明しています。  

DRONES

“Phantom”シリーズなど、4Kビデオカメラ搭載の低価格で高性能なドローンを開発している中国のDJI。そのドローンに搭載されている高精度な3軸ジンバル・スタビライザー付き4Kビデオカメラユニットを取り外して、ハンドヘルド仕様にしたのがOSMO。年末に発売され、そのスムーズなスタビライズ映像が「手持ちドローン」として話題になりましたね。スティルトパフォーマーが踊る撮影ブースでは、このOSMOの体験ができました。

DJIはじめ、ドローン関連のマーケットプレイスには大小様々な新型ドローンの展示がありました。

アメリカのテレコム企業Qualcommは障害物を模した最大級の飛行展示ブースで自律型ドローンの開発プラットフォームを展示。

中国YUNEECのブース。Intelが出資して自律型ドローンの開発を進めています。ドローンの分野では中国企業の進出がすさまじいですね。

CES2016で最大のドローン、中国のメーカーEHANGの一人乗りドローンのプロトタイプが注目を集めていました。こうなると普通にヘリコプターでは?と思うのですが。自動飛行ということで操縦装置は無し、運転席にはタブレットが付いているだけです。

Automotives

CES2016ではコネクテッド・カーの分野を中心に、自動車関連の展示もモーターショーを凌ぐ規模で行われています。
BMWは特設会場で試乗を含めた展示を行っていました。

BMW i8ベースのコンセプトカー、BMW i ビジョン・フューチャー・インタラクションを発表。

ヘッドアップ・ディスプレイでライダーに情報を伝えるヘルメットのコンセプト。

TOYOTAブース。交通の状況を自動学習するAIのデモを展示。

 メルセデス ブース

メルセデス ブース

 DENSOブース

DENSOブース

 CHEVROLETブース

CHEVROLETブース

 Fordブース

Fordブース

NVIDIAブース。NVIDIAといえば、コンピューターに搭載される高性能なグラフィック・プロセッサー GeForceのブランドとしておなじみのブランドですね。そのハイスペックな画像処理テクノロジーを応用した自動運転ソリューションNVIDIA DRIVEを展示していました。

 Audiブース

Audiブース

BOSCHではCES 2016イノベーションアワードを受賞した、ドライバーに触覚を伝えるハプティクス・タッチパネルが展示されていました。運転時の安全性を確保する上で、今後タッチパネル・ディスプレイが自動車にも普及してくると、このような運転中でも目をそらさず操作感を伝えるテクノロジーが必要になってくるんですね。

SUMMARY

今回、CES 2016を3日間に渡って、できるかぎり全部のブースを見るつもりで取材してきました。日本でも東京モーターショーや、InterBEEなどの国際見本市を毎年数多く取材してきましたが、日本の展示と比較すると、アメリカのCESのブース展示の傾向としては、より「店舗」のようなブースのレイアウトが印象的でした。InterBEEなど日本の見本市では、「ステージ」を設定して、プレゼンターが決まったタイムテーブルごとに登場して発表を行うという展示スタイルが一般的ですが、CESでは時間ごとにプレゼンターが発表を行っていたブースは意外と少数派でした。

 CASIOブースでは、30分おきのタイムテーブルでステージにプレゼンターが登場。そのたびに来場者は足を止めて注目していた。

CASIOブースでは、30分おきのタイムテーブルでステージにプレゼンターが登場。そのたびに来場者は足を止めて注目していた。

 水に濡れてもWSD-F10の防水マイクによりスマートウオッチの音声認識が機能するというデモ。

水に濡れてもWSD-F10の防水マイクによりスマートウオッチの音声認識が機能するというデモ。

HUAWEIブース。アップルストアの店舗のようなブースレイアウトで、ブランドショップ店員のような女性説明員を配して、高級路線を打ち出していた。

ホーム・キッチン家電のHaierブースでは、ピザ職人のコミカルなピザ生地パフォーマンスに人だかりができていました。

オーディオメーカー808では、回転するレコード盤に来場者が自分でペイントできるギフトコーナーがあり、行列ができていました。

CES会場のあちこちでライブ配信が行われていました。生中継でいち早く企業のニュースを伝えるライブ配信は非常に効果的。今後、日本の見本市でも積極的に取り入れていくブランドが増えるでしょう。

2016年1月
嘉悦基光 / Raybase LLC


弊社Raybase LLCでも様々な規模のライブ配信を行っています、ぜひご相談下さい!

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