CES 2016 Recap - Showcases

前回に続き、一般公開の展示ブースを中心に 2016年のCESのレポートをお伝えします。
総括としては、日本では知られていないような中国・台湾・韓国のメーカーが大手ブランドと並んで、より大規模な展示ブースを構えてアピールしていたのが衝撃的でした。会場内で耳にする外国語も中国語と韓国語が大多数。
みなさんはZTEやOPPO、TCLといったスマホ・家電メーカーを聞いたことがありますか?こういったブランドがどれだけグローバル・マーケットで存在感を持ってきているかご存知でしょうか。GoProのような、かつてのスタートアップがCESに出展しどんどん注目を集めて成長していった、そんな雰囲気を感じるためにも、日本からCESにもっと参加してほしいと思います。

CES 2016 展示会場 - LVCC ラスベガス・コンベンションセンター

CES 2016 展示会場 - LVCC ラスベガス・コンベンションセンター

最新のテクノロジーが発表されるCESは、まさに来場者が未来の世界がどんなことになっているかを垣間見れる見本市です。

デジタル家電や電子機器のみならず、世界中の私たちの生活をサポートするうえで最も重要なインフラとなったインターネット関連やスマートフォンに加えて、自動車分野、無人システム、スポーツや健康管理に関連に関連した様々な分野が複合したソリューションの広がりがありました。

Intelのブース。スポーツ、ヘルスケア、クリエイティビティを柱とした構成になっていました

Intel ブースの中央ではトークセッションが行われていた。

Intel ブースの中央ではトークセッションが行われていた。

ゲーマーのサポートも進化! Intel REALSENSEテクノロジーを使用した、プレーヤーの表情をゲーム画面に取り込んで合成するデモ。

ゲーマーのサポートも進化! Intel REALSENSEテクノロジーを使用した、プレーヤーの表情をゲーム画面に取り込んで合成するデモ。

自律飛行するドローンの展示。障害物を検知して、自律的に衝突を回避する。

自律飛行するドローンの展示。障害物を検知して、自律的に衝突を回避する。

Intel ブースのエントランスでは、先の基調講演でも披露されたバーチャルリアリティを使った3Dペインティングの展示を発見。

Intel ブースのエントランスでは、先の基調講演でも披露されたバーチャルリアリティを使った3Dペインティングの展示を発見。

VR - ヴァーチャルリアリティはCESでも大きなトピックのひとつ。様々なメーカーがヘッドマウントディスプレイタイプのVRを展示していました。

頭の動きに合わせて仮想現実のビジュアルがリアルタイムに追従するヘッドアップデバイス ”Rift” の2016年3月の一般向け発売をおこなった米オキュラス社のブース。facebookが2400億円!で同社を買収したことも話題になりましたね。オキュラス・リフトは創業者のパーマー・ラッキーが10代のころ自宅のガレージで開発したというストーリーがありますね。体験ブースには長い行列ができていました。

SAMSUNGはオキュラス・リフトと提携した、Gear VRを展示。

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GoProブースでも。GoProカメラ6台を組み合わせて360°同時に撮影された動画を、オキュラス・リフトで全方位体験できる。左端に見えるのが全方位GoProカメラの「GoPro OMNI」
この後、2016年8月17日にリリースされた。

発表が心待ちにされていた PlayStation VRの体験ブース。この後2016年10月13日に発売された。

発表が心待ちにされていた PlayStation VRの体験ブース。この後2016年10月13日に発売された。

ゲーム関連では”アクティブVR”のパイオニアを自負する、米Virturix社のゲームインターフェース”Omni”のデモが注目を集めていた。

オキュラス・リフトを装着したプレーヤーはウォーキング・マシーンの上を歩いたりしながら、全方向ゲームの世界に没入するVR体験ができる。

頭につけるタイプのディスプレイは、実は結構昔から存在していました。まだ私が映画学科の大学生だったころ(20年前..)ソニーが当時10万円くらいのヘッドマウントのディスプレイを発売していて、デジタルビデオカメラに繋いでビューファインダーの代わりになるかテストしたことがあります。当時は目の前に画面が表示されるだけのものでしたが、現代のヘッドマウントデバイスはユーザーの動きと連動して、全方向のVRを体験できるようにと大きく進化しています。

Intelがデモを行っていたようなバーチャル リアリティ・3D ペインティングがどのような仕組みなのか興味を持った私は、Nidec日本電産のブースで詳しい解説を聞くことができました。なんと、このシステムのコア・パーツは日本製だったんですね。

HTC コーポレーションで開発されたバーチャル リアリティ ”VIVE” システムについて、Nidec 日本電産株式会社 衣松孝祐氏にお伺いしました。

「このシステムは、2つのライトハウス・ベースステーションと呼ばれるボックスから照射されたレーザーを検出することにより、ヘッドマウントディスプレイやコントローラーそれぞれの位置が検出され、VRと連動する仕組みになっています。」

「弊社Nidecでは、このライトハウス・ベースステーション向けに特殊なモーターを開発しました。ベースステーションからは縦・横方向のレーダーのように空間をスキャンする赤外線レーザーが発光されています。正確なレーザースキャンが正確な位置検出を保証するため、Nidecでは非常に回転精度の高いモーターを開発しました。このライトハウス・ベースステーションにより、ユーザーはルームスケールと呼ばれる空間でバーチャルリアリティーを体験することができます。ユーザーは360°の映像の中で自由に歩き回ったり、バーチャルリアリティー空間とインタラクションすることができるようになっています。」

Nidecブースではこの他にも、超小型の3軸スタビライザーを搭載したUSBカメラや、ユーザーに皮膚感覚フィードバックを伝えるハプティクス技術、モーターや制動モジュールなどロボティクス開発に関わる展示を行っていました。

3D PRINTING

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3Dの仮想世界を橋渡して、物質世界に持ってくるテクノロジー、3Dプリンター。
コンシューマー・テクノロジーの分野で毎年成長し続けているもう一つのセクターとして、CES 2016では3Dプリント技術のデモやモデルがたくさん展示されていました。

 

3Dプリント・マーケットプレイスの展示スペースの中でも、いちばん来場者の注目を集めていたのがこの等身大の3Dプリント・ストームトルーパー。呆れるほどディテールに溢れていて、強いフォースを感じました!

「ストームトルーパーのオリジナルのプロトタイプ・コンポーネントは、弊社のProX800とProX950を使用して、SLA、ステレオ・リソグラフィーで造形されたんだ。」と語る、米3Dシステムズ社のウイリアム・スタージョン氏。テック・ギークの私にとって、CESはたまらない見本市です。

元々3Dプリンタは、主に自動車やエンジニアリング分野の製造業においてプロトタイプを製作するために使用されてきました。今ではデジタル技術の進歩により、一般向けにも数多くのアプリケーションが提供されています。

こちらはテキスタイル分野への応用例。サーモ・ポリウレタン素材で3Dプリントされたパーツを組み合わせたマテリアルはソフトな弾力があり、光を透過するなどファッションデザインに新しい可能性を提案していました。

一般消費者向けに手頃な価格で、よりコンパクトなユニットで3Dプリンターを提供しているのが、台湾のXYZ Printing 社。
同社の3Dプリンターは$269ドルからと、私も趣味で試してみたくなるような低価格です。

台湾XYZ Printingのフェア・ツァイ氏
「XYZ Printingでは、消費者ができるだけ3Dプリント技術に親しみやすいように、出来る限り手頃な価格で3Dプリンターを提供しています。今では誰もが3Dプリンターを試せる価格まで、コストダウンに成功しました。」
同社では他にも簡単に使える3Dスキャナーなど、廉価に試せるアクセサリーも充実していました。

TV & VIDEO

3Dといえば数年前には「3Dテレビ」がちょっとしたブームになっていましたが、今年は3DテレビはオキュラスVRに完全に取って代わったようですね。3Dのかわりに、テレビの世界では4KUHD(ウルトラ・ハイデフィニション)と、特にHDR-ハイダイナミックレンジに開発の重点が置かれていました。

SAMSUNGのブース。同社が開発をすすめるクオンタム・ドット・ディスプレイテクノロジーを採用した、1,000nitの輝度レベルのハイダイナミック・レンジと、世界初のベゼルレスデザインを採用した 4K Ultra HDテレビ、KS9500 が中心となった。

取り囲むような設計のSONYブース。

取り囲むような設計のSONYブース。

SONYのブースでは、ハイダイナミック・レンジをフルにサポートする超薄型バックライト・ドライブを採用したX930Dシリーズが発表された。

SONYは近年、4Kコンテンツ制作のためのビデオカメラの新機種を立て続けに発表しています。私も映像製作者の一人として、その動向には目が離せないのですが、とくに映画製作者向けにカスタマイズされたカムコーダーの展示コーナーが興味深かったです。

ソリッドステート・カムコーダー PXW-FS5 のシネマ製作カスタム例。小型軽量のパッケージにS-Log 4K収録やスーパースローモーション撮影など、様々な可能性が詰め込まれています。私も発売後すぐに同機種を購入して、コンテンツ制作に活用しています。

最高感度ISO409600という超高感度で映像業界が騒然となった α7Sの”ハリウッド・ムービー・プロダクション” カスタム。このようなミラーレス一眼カメラと、ビデオカメラの役割がクロスオーバーしてきているのが近年の映像制作のトレンドです。

Panasonicブースでは、Panasonic Studium と称したジャングルジムで4Kカメラのテスト撮影ブースを設けていた。

Panasonicブースでは、Panasonic Studium と称したジャングルジムで4Kカメラのテスト撮影ブースを設けていた。

Panasonic Studium - アスリートがウエアラブルカメラを装着してデモを行っていた。

4K CREATORS STUDIOとして、LUMIXを活用した動画制作のレクチャーを行うブースも設けられていた。

4K CREATORS STUDIOとして、LUMIXを活用した動画制作のレクチャーを行うブースも設けられていた。

4K の次世代として、すでに8Kの提案も始まっています。8Kの解像度を活かしたタッチパネルディスプレイの体験コーナー。

8Kを非圧縮で転送し、広色域で8K映像を表示するシステムの解説をするPanasonic技術部の瓜生 一英氏。

「こちらがレーザーバックライトを用いた、広色域タイプのディスプレイになっておりまして、BT.2020規格のおよそ98%を再現しているものになります。」

BT.2020 といえば、スーパーハイビジョンの国際規格として提唱されている、現在のハイビジョンデジタルシネマの色空間を遥かに超える広い表色系で、自然界に近い階調表現ができるという将来の放送規格ですが、それをほぼ再現しているというのは凄いことですね。

Canonブースでも8Kライド・エクスペリエンスと題して8K体験ブースが公開されていました。気になる8K Cinema EOSカメラはこの時点ではまだプロトタイプとのことで、実機の展示はありませんでした。

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今回のCESで個人的に一番うれしかった展示は、KODAKがスーパー8を復活させて、8mmフィルムカメラの新機種の展示を行っていたこと。

8ミリフィルムってご存知ですか?スーパー8はカートリッジに入った映画用フィルムで、私が映画学科で初めて映画製作を学んだのも、この8ミリフィルムでした。映像制作が完全にデジタルのプロダクションに変わった現在、国内ではフジフィルムがすでに8ミリフィルムの取り扱いをストップして何年も経つのですが、フィルムメーカーのKODAKがこうやって8ミリフィルムカメラの新機種を出してきたのは嬉しい限り。まさにアナログ・ルネッサンスですね。スーパー8カメラの最新機種はLCDビューファインダーがついていたり、USBやHDMIポート、SDカードスロットなど、現代の標準I/Oもちゃんと付いていました。KODAKは映画製作を学ぶ学生向けに8ミリのサポートを表明しています。  

DRONES

“Phantom”シリーズなど、4Kビデオカメラ搭載の低価格で高性能なドローンを開発している中国のDJI。そのドローンに搭載されている高精度な3軸ジンバル・スタビライザー付き4Kビデオカメラユニットを取り外して、ハンドヘルド仕様にしたのがOSMO。年末に発売され、そのスムーズなスタビライズ映像が「手持ちドローン」として話題になりましたね。スティルトパフォーマーが踊る撮影ブースでは、このOSMOの体験ができました。

DJIはじめ、ドローン関連のマーケットプレイスには大小様々な新型ドローンの展示がありました。

アメリカのテレコム企業Qualcommは障害物を模した最大級の飛行展示ブースで自律型ドローンの開発プラットフォームを展示。

中国YUNEECのブース。Intelが出資して自律型ドローンの開発を進めています。ドローンの分野では中国企業の進出がすさまじいですね。

CES2016で最大のドローン、中国のメーカーEHANGの一人乗りドローンのプロトタイプが注目を集めていました。こうなると普通にヘリコプターでは?と思うのですが。自動飛行ということで操縦装置は無し、運転席にはタブレットが付いているだけです。

Automotives

CES2016ではコネクテッド・カーの分野を中心に、自動車関連の展示もモーターショーを凌ぐ規模で行われています。
BMWは特設会場で試乗を含めた展示を行っていました。

BMW i8ベースのコンセプトカー、BMW i ビジョン・フューチャー・インタラクションを発表。

ヘッドアップ・ディスプレイでライダーに情報を伝えるヘルメットのコンセプト。

TOYOTAブース。交通の状況を自動学習するAIのデモを展示。

メルセデス ブース

メルセデス ブース

DENSOブース

DENSOブース

CHEVROLETブース

CHEVROLETブース

Fordブース

Fordブース

NVIDIAブース。NVIDIAといえば、コンピューターに搭載される高性能なグラフィック・プロセッサー GeForceのブランドとしておなじみのブランドですね。そのハイスペックな画像処理テクノロジーを応用した自動運転ソリューションNVIDIA DRIVEを展示していました。

Audiブース

Audiブース

BOSCHではCES 2016イノベーションアワードを受賞した、ドライバーに触覚を伝えるハプティクス・タッチパネルが展示されていました。運転時の安全性を確保する上で、今後タッチパネル・ディスプレイが自動車にも普及してくると、このような運転中でも目をそらさず操作感を伝えるテクノロジーが必要になってくるんですね。

SUMMARY

今回、CES 2016を3日間に渡って、できるかぎり全部のブースを見るつもりで取材してきました。日本でも東京モーターショーや、InterBEEなどの国際見本市を毎年数多く取材してきましたが、日本の展示と比較すると、アメリカのCESのブース展示の傾向としては、より「店舗」のようなブースのレイアウトが印象的でした。InterBEEなど日本の見本市では、「ステージ」を設定して、プレゼンターが決まったタイムテーブルごとに登場して発表を行うという展示スタイルが一般的ですが、CESでは時間ごとにプレゼンターが発表を行っていたブースは意外と少数派でした。

CASIOブースでは、30分おきのタイムテーブルでステージにプレゼンターが登場。そのたびに来場者は足を止めて注目していた。

CASIOブースでは、30分おきのタイムテーブルでステージにプレゼンターが登場。そのたびに来場者は足を止めて注目していた。

水に濡れてもWSD-F10の防水マイクによりスマートウオッチの音声認識が機能するというデモ。

水に濡れてもWSD-F10の防水マイクによりスマートウオッチの音声認識が機能するというデモ。

HUAWEIブース。アップルストアの店舗のようなブースレイアウトで、ブランドショップ店員のような女性説明員を配して、高級路線を打ち出していた。

ホーム・キッチン家電のHaierブースでは、ピザ職人のコミカルなピザ生地パフォーマンスに人だかりができていました。

オーディオメーカー808では、回転するレコード盤に来場者が自分でペイントできるギフトコーナーがあり、行列ができていました。

CES会場のあちこちでライブ配信が行われていました。生中継でいち早く企業のニュースを伝えるライブ配信は非常に効果的。今後、日本の見本市でも積極的に取り入れていくブランドが増えるでしょう。

2016年1月
嘉悦基光 / Raybase LLC


弊社Raybase LLCでも様々な規模のライブ配信を行っています、ぜひご相談下さい!

CES 2016 Recap - Press Day

CES - Consumer Electronics Show が今年もはじまりましたね!
2016年にCESを取材した時のレポートがありましたので公開します。CESとはどういった見本市なのか?これから初めて参加される方にも、その規模感などをお伝えできればと思います。


新年にアメリカで発表されるスマート・デバイスの取材。そういった依頼を受けて、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで開催される、世界最大の家電見本市、 CESに行ってきました。

 

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CES の開催は今年で49年目。初開催の1967年以来、さまざまな新製品がこのイベントで発表されてきました。過去にはビデオテープレコーダー(1970年)、ビデオカメラ、CDプレーヤー(1981年)ファミコン(1985年)からブルーレイまで、数多くの画期的な新製品が世界に先駆けてこのCESでお披露目されてきたんですね。各メーカーも新製品の発表をこのCESのタイミングに合わせてくるとあって、今年は何が登場するか、メディアのみならず世界中の注目を集めているイベントなんです。

2016年のCESの一般展示は1月6日〜9日までの4日間開催されました。前年よりも大幅に拡張して、2,400万平方フィートの展示スペースに、世界中から3,600社の出店が集まったとのこと。これ感覚的にどれくらいの広さかというと、たとえば東京で展示会というとモーターショーなどが行われるビックサイトや幕張メッセがありますよね、あの会場が3つも4つもある感じで、とにかくすごい規模なんです。私は前日のプレスデーから3日間みっちり居ましたが、すべてを見て回ることは到底無理でした。会場内を取材して回っていると、「あなたのテーマは何ですか?どういう興味・分野なの?」と聞かれたのですが、みなさん自分の分野を決めて、重点的に見て回っているようでした。

中心となる展示会場、LVCC - ラスベガス・コンベンション・センター

中心となる展示会場、LVCC - ラスベガス・コンベンション・センター

 会期中は数々な展示のほか、世界初の新製品発表、業界リーダーの基調講演などが同時多発的に開催されます。
巨大なカジノホテルのコンベンションルームが発表会場となっています。

LVCC - 会場内

LVCC - 会場内

ベニス風がテーマのカジノホテルVENETIAN - 3000人規模の基調講演の会場の一つとなった。

ベニス風がテーマのカジノホテルVENETIAN - 3000人規模の基調講演の会場の一つとなった。

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日本からラスベガスには、普段は直行便が飛ばないのですが、CESのこの時期だけ、乗り継ぎなしのラスベガス直行便が就航しています。いつもチケットの手配が出発前ギリギリなのですが、運良く年末に残席少ないデルタ航空の直行便を予約できました!

CESの取材にはオンラインによる事前登録が必要で、ラスベガスの各所に設置される交換所でバッジ(入場パス)を取得します。私はラスベガス・マッカラン空港到着ゲートすぐの交換所で無事Pressバッジをゲット。この先4日間、ラスベガスの街のあちこちでこのバッジを下げた人々を見掛けました。

 

空港のほか会場周辺の数か所でバッジ・ピックアップが可能。

空港のほか会場周辺の数か所でバッジ・ピックアップが可能。

来場者数が10万人とも20万人とも言われるCES。関係者まで含めて会期中にラスベガスの人口が急増します。ひしめき合うカジノホテルが主なアコモデーションとなるわけですが、観光都市ラスベガスには世界中から来場する宿泊客を余裕でおもてなしする施設が揃っているわけですね。もともとニューヨークで始まったCESですが、規模の拡大とともにラスベガスに場所を移したという経緯があります。

 

ホテル"VENETIAN"のロビー

ホテル"VENETIAN"のロビー

ラスベガスのカジノホテルというと豪華な内装や盛大なビュッフェが有名ですが、じつは比較的安く泊まれるんです。私は過去にネバダ州の砂漠で行われる”バーニングマン” に毎年参加してきたのですが、その起点となるラスベガスの隣町、ネバダ州リノではいつもカジノホテルに宿泊していました。リノにも”Circus Circus” や”Golden Nuggets”など、ラスベガスと同じ系列のカジノホテルがあり、だいたい一泊30$から50$程度で、日本人の私には広すぎと感じる部屋に泊まることができるんです。カジノ経営側としては、まずはゆっくり泊まって、カジノで過ごしてもらって、お金を使ってもらって、っていうのが戦略なので、部屋もビュッフェの食事も割安感を持たせてカジノに集客するわけですね。ちなみに、カジノではお酒もタダなんですよ!持ってきてくれたウエイトレスさんに1ドルくらいのチップを渡せばOK。これも酔っ払わせて気が大きくなって、という戦略ですね。

普段は割安で宿泊できるカジノホテルですが、しかしCESの期間においては一泊$250とか$350とか、ここぞとばかりに数倍にレートを釣り上げてきます。このへんもギャンブルの仕組みと同じですね。

そんなに経費を掛けられない私は、CESのメイン会場から少し離れたダウンタウンにある、"フリーモント"に滞在しました。CES期間中でも値上げしない、ラスベガスで老舗のカジノホテルです。

そんなに経費を掛けられない私は、CESのメイン会場から少し離れたダウンタウンにある、"フリーモント"に滞在しました。CES期間中でも値上げしない、ラスベガスで老舗のカジノホテルです。

ダウンタウンにはバグジー・シーゲルが所有していたカジノホテルがあるなど、ラスベガスの開発がまさにここから始まったという感じがします。

ダウンタウンにはバグジー・シーゲルが所有していたカジノホテルがあるなど、ラスベガスの開発がまさにここから始まったという感じがします。

Press Day

Pressバッジを手にした私は、一般公開の展示の前日に取材記者に向けた記者会見が行われる、プレスデーから参加しました。

プレスデーには展示会場と離れたマンダレイベイホテルの会場でプレスカンファレンスが行われた。

プレスデーには展示会場と離れたマンダレイベイホテルの会場でプレスカンファレンスが行われた。

この日は朝から45分刻みで各出展企業のプレスカンファレンスが連続します。一部ソニーなど招待メディアのみの記者会見もあるのですが、プレスであればほとんどのカンファレンスに入場可能。注目を集める企業の会場の前では早い時間から、入場を待つメディアの列が出来ていました。 

 

SAMSUNGのプレスカンファレンスを待つ列。世界中の様々な言語が飛び交う。

SAMSUNGのプレスカンファレンスを待つ列。世界中の様々な言語が飛び交う。

CASIOのプレスカンファレンスでは、”スマート・アウトドア・ウォッチ” WSD-F10が発表された。

CASIOのプレスカンファレンスでは、”スマート・アウトドア・ウォッチ” WSD-F10が発表された。

G-SHOCKブランドの同社らしくヘビーデューティー、アウトドアユースに特化したAndroid OS搭載のスマートウオッチだ。

G-SHOCKブランドの同社らしくヘビーデューティー、アウトドアユースに特化したAndroid OS搭載のスマートウオッチだ。

TOYOTAのプレスカンファレンス。自動運転に関する発表が中心となった。

TOYOTAのプレスカンファレンス。自動運転に関する発表が中心となった。

SAMSUNGのプレスカンファレンス。クオンタム・ドット・テクノロジーを採用したSUHDテレビや、内蔵カメラで常時内容が把握できる冷蔵庫など、様々な家電製品が発表され、注目が集まった。

SAMSUNGのプレスカンファレンス。クオンタム・ドット・テクノロジーを採用したSUHDテレビや、内蔵カメラで常時内容が把握できる冷蔵庫など、様々な家電製品が発表され、注目が集まった。

NETFLIX リード・ヘイスティングスCEOによる基調講演。”中国以外の”世界中で配信を拡大した、とアピール。

NETFLIX リード・ヘイスティングスCEOによる基調講演。”中国以外の”世界中で配信を拡大した、とアピール。

プレスルームもこの広さ。

プレスルームもこの広さ。

プレスルームのWi-Fi。強いフォースを感じます!

プレスルームのWi-Fi。強いフォースを感じます!

プレスデーの最後にはヴェネツィアン・ホテルの会場にて、CESの主催団体、米CTA - コンシューマー・テクノロジー・アソシエーションCEO、ゲーリー・シャピロ氏のスピーチに続き、Intel CEOのブライアン・クリザニッチ氏による基調講演が行われました。

「 革新的な技術は間違いなく私たちの能力を高めるでしょう。私たちの業界は、文字通り世界を変えています。私たちの地球の最も複合した課題のいくつかを解決し、グローバルに人々の生活を向上させることができるのです。」ゲーリー・シャピロ氏はスピーチにおいて、もはや ”家電” という範疇に収まりきらなくなった、広範なテクノロジーの広がりを強調していた。

「 革新的な技術は間違いなく私たちの能力を高めるでしょう。私たちの業界は、文字通り世界を変えています。私たちの地球の最も複合した課題のいくつかを解決し、グローバルに人々の生活を向上させることができるのです。」

ゲーリー・シャピロ氏はスピーチにおいて、もはや ”家電” という範疇に収まりきらなくなった、広範なテクノロジーの広がりを強調していた。

ゲーリー・シャピロ氏のスピーチでは、CESの主催団体の名称変更の発表があり、 CEA コンシューマー”エレクトロニクス” アソシエーションから、CTA - コンシューマー”テクノロジー” アソシエーションへと変更するというアナウンスがありました。”CES” コンシューマー・エレクトロニクス・ショー は日本語で言うと消費者”家電” 見本市となるわけですが、”エレクトロニクス”から”テクノロジー” へと名称を変更するにあたり、新しい時代の方向性を示したと言えるでしょう。

Intel の基調講演はヴィジュアル・アーティストのシャンテル・マーティンによる、”HTC Vive” 3D VR(ヴァーチャル・リアリティ)を使ったパフォーマンスから始まりました。

Intel CEOのブライアン・クリザニッチ氏の基調講演スピーチでは ”エクスペリエンス”というキーワードが強調されていました。
同社の基調講演では「スポーツとゲーム」「健康とウェルネス」「クリエイティビティ」という3つの”エクスペリエンス” にテーマを集中し、様々なイニシアティブが発表されました。

Intel CEO ブライアン・クリザニッチ氏「我々はすでに、消費者が製品よりもそれを通した ”エクスペリエンス” を選択しているという、コンシューマー・テクノロジーの新しい時代に入ったと考えています。」

Intel CEO ブライアン・クリザニッチ氏
「我々はすでに、消費者が製品よりもそれを通した ”エクスペリエンス” を選択しているという、コンシューマー・テクノロジーの新しい時代に入ったと考えています。」

様々なIoTデバイスに埋め込むことができるボタンサイズの超小型ウェアラブル・ハードウェアモジュール「キュリー」プロセッサー・センサー・ハブを活用した、様々な事例を紹介していました。

「キュリー」を搭載したウェアラブル・センサーをアスリートが身に付けることにより、スポーツの競技に新しい様々な側面をもたらすというデモンストレーション。審査やスポーツ番組の放送中でも、選手の競技データがリアルタイムに表示される。

AR (拡張現実) を活用した “DAQRI” スマート・ヘルメットのデモ。実際の視覚を認識しながら、ヘッドアップディスプレイにより、修理方法などの追加情報が視覚に表示される。

映画音楽の作曲で知られるインド出身の音楽家、A.R.ラフマーンを迎えたセッション。身に付けたデバイスにより、モーションそのものが楽器となって演奏可能に。

基調講演の最後はA.R.ラフマーンのライブ演奏で閉幕。3000人の観客一人ひとりに、ワイヤレス通信機能が盛り込まれた光るLEDデバイス”PIXMOB”ブレスレットがあらかじめ配布されていて、音楽とイルミネーションがシンクロしていました。A.R.ラフマーンのライブが見れて感激!

Intel といえばパーソナル・コンピューターに入ってるCPUプロセッサーのメーカーというイメージが一般的ですが、CES2016の基調講演ではそのIntel = パソコンというイメージを払拭するように、ゲーム関連以外はパソコンが全く登場しませんでした。そのかわりIoT、ウエアラブル関連の発表がほとんどを占めており、「キュリー」モジュールを中心とした同社の方針が提示されていました。

誰もがセンサーを装備した極小プロセッサーを身に付け、ネットワークに繋がる時代。それをIntelは提唱しているわけですが、実はもっとその先にある、数多くのセンサーデバイスから集約されてくる膨大なデータの世界 = ビッグデータの活用を見越しているんだと思います。いまでこそウエアラブルとして身に付けるデバイスは、近い将来、プロセッサーがより身体に密着してくることでしょう。誰もが「インテル入ってる」状態になる、そんな未来社会を垣間見た基調講演でした。

Intel基調講演のオープニングでVRドローイング・パフォーマンスを披露したシャンテル・マーティン。彼女は一時期、東京で活動していたこともあり、じつは私とは10年来の友人なんです。毎週のように集まっては、みんなで当時私が住んでいた日本橋のフラットの壁面にドローイングを描いたり、一緒にミュージックビデオを製作したこともあるんですよ。

翌日、シャンテル・マーティンと再会して、インタビューできる機会がありました!

「現在のテクノロジーはもっと小脳 (cerebellum) 、もっと頭の中に近づいてきています。特に今年のCESでは、頭に装着する様々なデバイスが展示されていますね。クリエイティブな視点から見て、これはとても良いこと。でも共有することがとても難しくなってきています。例えば私がVRドローイングをしている時、私と同じ体験を持ってもらうには、ヘッドセットをつけていないと難しいですよね。将来はこれがどのように変わっていくのか、とても興味があります。でも必ず、私達の創造性や共感について、より多くの可能性をもたらしてくれるでしょう。」

インタビューの中で、cerebellum(小脳)という言葉が印象的でした。Intelが開発してきたコンピュータのプロセッサーは、よくパソコンの「ブレイン(大脳)」と例えられてきましたが、これからはより小脳に、より感覚器官にダイレクトに働きかけるテクノロジーに進化していくだろうということを、テクノロジーを駆使してきたヴィジュアル・アーティストとしての活動のなかで予見しているようでした。

次回は、CES 2016 の展示会場をリキャップします!